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後遺障害14級で障害者手帳は交付される?

交通事故で負った怪我が完治せずに症状が固定化すると「後遺障害等級認定」を
申請することになります。

では後遺障害14級と認定された場合には「障害者手帳」が交付されるのでしょうか?

後遺障害14級では障害者手帳の交付は難しい

結論から言うと、交通事故が原因で後遺障害14級に認定されたとしても
障害者手帳の交付を受けることは難しいです。

交通事故が原因の後遺障害でも症状によっては障害者手帳の交付を受けることは
できます。

ただ後遺障害14級は後遺障害の等級としては一番低い、
要するに後遺障害の症状が軽いので身体障害者と認定される可能性が低いのです。

障害者手帳が交付されるのは基本的に「日常生活に支障をきたすほどの障害」を
負っている場合です。

後遺障害14級では日常生活に支障をきたすほどの症状にならないことが多いので、
後遺障害14級だと障害者手帳の交付は難しいというわけです。

後遺障害と身体障害では等級認定をする機関が別

交通事故が原因の後遺障害と先天的な原因を含む身体障害では
等級を認定する機関が違います。

身体障害の等級は都道府県、指定都市、中核都市といった自治体の担当部署が
認定しています。

後遺障害の等級を認定しているのは「損害保険料率算出機構」という団体です。

損害保険料率算出機構は損害保険料率算出団体に関する法律に基づいて
設立された唯一の団体です。

日本で保険サービスを提供しているほとんどの保険会社が加盟しており、
自動車保険だけでなくあらゆる保険の保険料率を算出しています。

損害保険料率算出機構が算出した保険料率を基に各保険会社が保険料率を決めて、
交通事故などの際に支払われる保険金を計算しているわけです。

また身体障害等級は身体障害者福祉法、
後遺障害は自動車損害賠償保障法と認定の基準となる法律も違っています。

認定する機関が違えば認定基準も違いますから、後遺障害が認定されたからと言って
身体障害も認定されるとは必ずしも言えないのです。

後遺障害14級には9つの種類がある

一口に後遺障害14級と言っても、
症状や症状が出ている部位によって1号から9号までの9種類に分かれています。

後遺障害14級1号は「1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの」
です。

まぶたを閉じているにも関わらず白目の一部が露出するのが
「まぶたの一部に欠損を残し」ている状態となります。

まつげが全体の2分の1以上抜け落ちて生えてこなくなる状態が「まつげはげ」です。

後遺障害14級2号は「3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」です。

補綴とは歯が無くなったり欠けたりした場合に入れ歯や差し歯などの人工物で
補うことを意味します。

交通事故で3本以上歯が折れたあるいは大きく欠けてしまった場合には
後遺障害14級2号と認定されます。

後遺障害14級3号は「1耳の聴力が1m以上の距離では小声で解することが
できない程度になったもの」です。

純音聴力検査で3回の聴力レベルの平均が40dB~70dB未満だと
後遺障害14級3号と認定されます。

後遺障害14級4号は「上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」、
5号は「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」です。

上肢の露出面は肩から指先までで、
簡単に言うとノースリーブの服を着た時に露出する部分を指します。

下肢の露出面は太ももの付け根からつま先までで、
簡単に言うと一般的な下着を着用した時に露出する部分です。

美醜については多分に主観が入りがちですが、後遺障害の認定には
一応基準があって医師の判断で醜いあとかどうかが決まります。

後遺障害14級6号は「1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの」です。

要するに手の人差し指・中指・薬指・小指のいずれかの骨が交通事故によって折れ、
治療したものの元通りにくっつかなった場合などに14級6号と認定されます。

後遺障害14級7号は「1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することが
できなくなったもの」です。

遠位指節間関節は一般的に指の第一関節と言われる部分で、
交通事故が原因で指先が曲がらなくなった場合などは後遺障害14級7号となります。

後遺障害14級8号は「1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの」
です。

第3の足指以下は足の中指・薬指・小指のことです。

足指の用を廃したは第一関節から先を失った、もしくは指が動かない・動かしにくいなど
著しい運動障害が場合を指します。

後遺障害14級9号は「局部に神経症状を残すもの」です。

局部は特定の部位を指しているわけではなく体の中のどこか一部分のことで、
交通事故では首や腰を指すケースが多いです。

神経症状は簡単に言うと痺れや痛みなどの症状のことで、
「むち打ち症状の酷いもの」といったぐらいものとなります。

ちなみにむち打ちでもレントゲンやMRIで異常が認められる場合は
「局部に頑固な神経症状を残すもの」として後遺障害12級13号と認定されます。

後遺障害14級に認定されるケースは9号がほとんど?

明確な資料はありませんが。後遺障害14級に認定されているケースの多くは
9号とされています。

1~8号は第三者が見ても障害が残っていることが分かりますが、
9号については外見からは障害が残っていることが分かりにくいです。

レントゲンやMRIでも異常が認められず、後遺障害14級9号については
被害者の自己申告に基づいて認定されるケースが多くなっています。

交通事故に遭って首や腰に痛みや痺れがあるからと言って
すぐに14級9号の認定が受けられるわけではありません。

しかし外見からは分かりにくく自己申告に拠るところが大きい後遺障害14級9号では
障害者手帳の交付を受けられる可能性はゼロに近いです。

後遺障害を認定してもらうには

交通事故による怪我が元で後遺障害が発生しても、
申請しないと後遺障害として認定されません。

後遺障害認定の申請には
 ・事前認定
 ・被害者請求
の2種類があります。

「事前認定」では後遺障害が発生していることを証明する診断書を医師に
交付してもらい、それを加害者が加入する任意保険会社に提出します。

損害保険料率算出機構に提出する後遺障害認定の申請に必要な書類は
任意保険会社が全て用意し、申請手続きも全て任意保険会社が行うのです。

「被害者請求」でも診断書を医師に交付してもらうところまでは同じで、
申請に必要な書類は被害者自身で用意します。

申請書類に診断書を添付して加害者が加入している自賠責保険会社に
提出するのです。

事前認定の方が手間はかからないが・・・

診断書を提出するだけの事前認定の方が手間はかかりませんが、事前認定だと
後遺障害の等級が下がるあるいは認定そのものが受けられない可能性があります。

事前認定で申請を行うのは加害者の任意保険会社で、
後遺障害が認定されて保険金を支払うのも加害者の任意保険会社です。

また後遺障害の認定は申請書類のみで判断されることが多く、
診断書は参考資料程度の扱いとなります。

加害者の任意保険会社が保険金支払いを少しでも少なくしようとして、後遺障害の
症状を過小評価した書類を作成して提出する可能性が事前認定ではあるのです。

そのため事前認定では後遺障害14級9号の認定は受けられない可能性が
高いわけです。

被害者請求は被害者自身が申請書類を用意するので、
症状を正しく伝えられ後遺障害認定を受けられる可能性が上がります。

後遺障害14級でも1~8号の外見で症状が分かるものなら事前認定でも後遺障害が
認定されないことは少ないです。

しかし外見で症状が分かりにくい14級9号については、
事前認定ではなく手間はかかるものの被害者請求の方が認定されやすいのです。

後遺障害の申請を被害者請求で行う場合は、
書類の作成や手続きも含めて弁護士に相談してみてください。

後遺障害の認定を受けるポイント

後遺障害の中でも一番症状の軽い14級でも認定を受けるのは簡単ではなく、
いくつかのポイントを押さえておかないといけません。

特に症状が軽い14級の認定では「事故の大きさ」が重要なポイントとなります。

後遺障害の認定を受けるには、交通事故で受けた傷が後遺症として残ったことや
後遺症と交通事故の因果関係を被害者自身が証明しなければいけません。

被害者や加害者が乗っていた車が全損するほどの大事故なら、
後遺症が残るほどの怪我を負ったと認められやすいです。

しかし軽くぶつかったあるいはこすった程度の事故では、
後遺症が残るほどの怪我を負ったとは認められにくいです。

事故直後から入通院している

交通事故と後遺症の因果関係を証明するためには、
交通事故に遭った直後から入通院していることが必要です。

怪我の箇所によっては事故後数日経ってから痛みや痺れが出てくることもありますが、
事故直後に診察を受けていないと痛みや痺れが事故によるものか判断できません。

本当に事故の後遺症なのに事故直後に医師の診察を受けなかったために
後遺障害の認定が受けられないとなると何の補償も貰えません。

特に事故直後は被害者も興奮状態で痛みや痺れを感じないことがあります。

交通事故に遭ったら、後遺障害云々は別として、
痛みや痺れを感じていなくてもすぐに病院で診てもらうのがベターです。

症状が一貫して継続している

後遺障害の認定を受けるには、
症状が事故直後から一貫して継続していないといけません。

軽い怪我だと事故直後には強い痛みを感じますが、
治療を受けて時間が経つと痛みが和らいでいきます。

時間が経って痛みや痺れが和らぐと後遺症が残っているとは言えません。

治療を受けて時間が経っても事故直後の強い痛みや痺れが残っていないと
後遺障害として認定を受けるのは難しいのです。

症状が継続していると言っても
 ・雨が降ると患部が痛む
 ・何となく患部に違和感がある
といった程度では後遺障害とは認められません。

医学的所見の有無

後遺障害が認定されるかどうかを大きく左右すると言っても良いのが
「医学的所見の有無」です。

要するに医学的に見て交通事故による後遺症が残っていると判断されれば、
後遺障害として認定される可能性が高いということです。

特に外見で症状が分かりにくい後遺障害14級9号では医学的所見の有無が
重要なポイントとなります。

14級9号に多いむち打ちはレントゲンやMRIでは異常が見られないものの、
 ・スパーリングテスト
 ・ジャクソンテスト
といった診察を受けることで客観的に痛みや痺れが発生していることが分かります。

詳しい説明は割愛しますが、むち打ちで後遺障害を申請するならスパーリングテストや
ジャクソンテストを実施してもらいましょう。

後遺障害14級に認定されるとどうなる?

後遺障害14級だと認定されると、障害者手帳は貰えない可能性が高いものの
 ・後遺障害慰謝料
 ・逸失利益
という2つの慰謝料を加害者に請求できます。

後遺障害慰謝料は交通事故によって後遺症が残ったことに対する慰謝料です。

逸失利益は交通事故に遭わなければ将来得られたと推定される利益を補償するもので、
休業損害とは別に請求できます。

後遺障害14級の後遺障害慰謝料は以下の通りです。
 ・自賠責基準 32万円
 ・任意保険基準 約40万円
 ・弁護士基準 110万円

任意保険基準は任意保険会社ごとに決めているもので一定のものではないため、
任意保険基準での後遺障害慰謝料は40万円を下回ることも上回ることもあります。

被害者は弁護士基準、加害者の任意保険会社は任意保険基準を元に慰謝料を算出し、
協議によって実際の慰謝料金額を決定します。

逸失利益の計算方法

逸失利益については
 「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(ライプニッツ係数)」
という計算方法で算出するのです。

基礎収入は基本的に前年度の年収で、給料収入の無い専業主婦・主夫は
賃金センサスに基づいた平均賃金を基礎収入として計算します。

労働能力喪失率は後遺障害14級では5%、
労働能力喪失期間は5年(ライプニッツ係数は4.5797)とされています。

例えば後遺障害14級と認定された被害者の前年度の年収が500万円だと
逸失利益は「500万円×0.05×4.5797」で114万4925円です。

場合によっては後遺障害14級と認定されることで、一般的なサラリーマンだと
慰謝料と逸失利益で200万円以上を受け取れる可能性があります。

障害者手帳が交付されたらどうなる?

可能性は低いものの、
後遺障害14級で障害者手帳が交付されたらどうなるのでしょうか?

障害者手帳が交付されると「障害年金」を受け取ることができます。

交通事故に遭った時に加入している国民年金や厚生年金から
障害基礎年金や障害厚生年金が支払われます。

ただし障害者手帳の交付を受けても、
厚生労働省が定める要件をクリアしていないと障害年金は受け取れません。

「更生医療費の助成」として後遺障害の症状緩和を目的とした医療にかかる費用が
軽減され、自己負担額が1割となります。

「補装具購入の助成」も受けられて車いすや補聴器、義足などの購入・修理の
自己負担が1割となります。

さらに自宅のリフォームや修理にかかる費用に対しても助成をうけることが可能です。

「税金の優遇、控除」として所得税・住民税・贈与税・相続税などの優遇措置、
自動車税・軽自動車税・自動車取得税の控除が受けられます。

住んでいる自治体によっては
 ・公共交通機関の運賃割引
 ・携帯電話の基本料金割引
 ・公共施設の利用料割引
 ・NHK受信料の免除
 ・公営住宅への優先入居
などの優遇措置も設けられています。

ただし全ての優遇措置には要件があり、後遺障害14級では障害者手帳を
交付されても受けられない優遇措置もあるので注意してください。

まとめ

交通事故の後遺障害には1~14の等級があり、
さらに14級も1~9号の9つに種類が分かれています。

追突事故などで負いやすいむち打ちでも後遺症が残ると後遺障害14級9号として
認定される可能性があるのです。

ただ後遺障害14級では障害者手帳が交付される可能性が低く、
中でも9号は障害者手帳が交付される可能性が一番低いです。

障害者手帳が交付されなくても後遺障害14級と認定されれば、
後遺障害慰謝料と逸失利益を加害者に請求できます。

交通事故被害に遭ったらすぐに病院で受診し、痛みや痺れが残るようなら
通院治療を続けて診断書を医師に書いてもらい後遺障害認定を申請しましょう。

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