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工事現場で重要なKY活動とは?具体的な事例と対策

全ての作業に危険がつきまとう工事現場ではKY(危険予知)活動が重要で、
工事に関わる事業者は労働安全衛生法においてKY活動が努力義務となっています。

では実際にKY活動とはどういったことをすれば良いのか、
実際に工事現場で起こりやすい危険事例とともに詳しく見ていきましょう。

危険が起こらないようにするにはどうするかを考えるのがKY活動

KY活動や危険予知活動というと大袈裟に聞こえますが、
単に「現場で危険なことが起こらないようにするにどうすれば良いか」を考えることです。

ほとんどの工事現場に関わる事業者は「現場で危険が無いように作業すること」を
考えています。

ただ作業員の中に1人でも危険に対する認識が薄い人が居ると、
工事現場全体を巻き込む危険が起こりかねません。

僅かでも起こりうる危険を排除するために、
工事現場に関わる作業員全員に危険予知を徹底させるのがKY活動なのです。

作業を始める前の毎日の朝礼で「今日はこういった作業をしますが、
こういう危険を伴うので注意してください」という話をするケースがあります。

実際に事故が起こらないように現場に対策を施すことだけがKY活動ではなく、
朝礼でその日の作業に関する注意事項を話すこともKY活動の一環なのです。

発生頻度と重篤度で優先順位を決める

KY活動では事故防止措置を講ずることも重要ですが、
事故防止措置を講じる箇所の優先順位は「発生頻度」と「重篤度」で判断します。

発生頻度は
 1.ほとんど起こらない
 2.時折起こる
 3.頻繁に起こる
の3段階です。

重篤度は
 1.軽微(起きても大きな怪我に繋がらない)
 2.重大(起きると入院レベルの怪我に繋がる)
 3.極重大(起きると命に関わる)
の3段階です。

現在関わっている工事現場で起こりうる危険の発生頻度と重篤度が
どれに当たるかを考えて対策を講じる優先順位を決めます。

例えば発生頻度3で重篤度1の危険は、注意を促すぐらいで対策を講じる必要は
無いですし、対策を講じるとしても優先順位は低いです。

しかし発生頻度1でも重篤度3の危険は、万が一にも発生すると現場全体だけでなく
施工主にも迷惑がかかるので最優先で対策を施さないといけません。

現場経験を重ねると「工事現場ではどういった事故が起こりやすいか」
「どういう事故が重大な事態に繋がるか」が経験則で分かってきます。

経験則を元に優先的に対策を講じるべき危険がどういうものかを判断して、
どういった対策を講じるのかを考えましょう。

ハインリッヒの法則

KY活動を考える上で切っても切り離せないのが「ハインリッヒの法則」もしくは
「1:29:300の法則」です。

アメリカの安全技師であるハインリッヒが経験則から導き出した法則です。

1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故や災害と300件のヒヤリハット事案が
あることを示唆しています。

工事現場に限らずハインリッヒの法則は災害防止における「バイブル」となっており、
世界中の多くの企業が従業員に対する注意喚起として活用しているのです。

軽微な事故やヒヤリハットを減らす、
究極的にはゼロにすることで1件の重大事故を回避することができます。

たった1件でも作業員の命に関わる重大事故が発生すると、
その工事現場全体の作業が止まってしまいます。

そうした事態にならないようKY活動によって軽微な事故やヒヤリハットに繋がる芽を
摘んでおくことが重要というわけです。

重大事故の多くが工事現場で発生している

工事以外の現場でも労働災害が発生していますが、作業員や従業員の命に関わる
重大事故がもっとも多く発生しているのが工事現場なのです。

厚生労働省によると2021年1月から12月までの1年間で労働災害で
亡くなった人の数は867人となっています。

4年ぶりに労働災害で亡くなった人の数が増加に転じ、
13次防の目標達成が困難な状況となったのです。

ちなみに13次防とは「第13次労働災害防止計画」という
2018年から2022年にかけての中期計画のことです。

13次防では労働災害で亡くなる人を15%以上、
亡くなったり怪我をする人を5%以上2017年比で減らすことを目標としています。

2018年から2020年にかけては目標達成可能なペースでしたが、
2021年に労働災害で亡くなる人が増加したことで目標達成が難しくなっています。

2021年に労働災害で亡くなった867人の内288人が建設業で、
労働災害で亡くなった人の30%以上が工事現場での事故が原因なのです。

2023年から5年間の14次防が策定されることが決まっており、恐らく14次防でも
13次防同様の労働災害被害者の削減目標が設定されると考えられます。

14次防の目標を達成するには、
労働災害被害者の割合が最も多い工事現場における対策が何よりも重要です。

建設業界全体としてはもちろん、個々の建設会社や作業員がKY活動に
積極的に取り組むことが作業員の命を守ることと14次防の目標達成に繋がるのです。

工事現場のヒヤリハット事例

KY活動においては、ゆくゆくは重大な事故に繋がる恐れのある「ヒヤリハット」を
少なくすることが重要となります。

では実際の工事現場で起こりうる可能性があるヒヤリハット事例を
いくつか紹介しましょう。

厚生労働省や国土交通省、各自治体が様々な業種で実際に起こった
ヒヤリハット事例を公開しているので、そちらも参考にしてください。

トラックの荷台からの転落

工事に必要な資材を積んだり降ろしたりなど工事現場ではトラックの荷台に上がって
作業することも少なくありません。

トラックの荷台に上がって作業をしている作業員が荷台から落ちそうになったり、
実際に落ちる事例が発生しています。

例えばトラックの荷台に積んでいる鋼材にシートをかけたり、
かかっているシートを外したりする際に転落してしまうといったことです。

雨が降った後や小雨が降る中だと鋼材が少し濡れていて、シートをかけたり
外したりする際に濡れた鋼材に足を滑らせて荷台から落ちてしまうことがあります。

この場合の対策としては
 ・しっかりとした滑り止めのついた靴を履いて作業すること
 ・鋼材は濡れると滑りやすいことを認識しておくこと
 ・転落防止の安全帯を着用すること
などが挙げられます。

特にトラックの荷台での作業では安全帯を着用していないケースが多いですが、
トラックの荷台からでも頭から落ちると重大事故になります。

たとえ大した高さでないとしても、トラックの荷台に上がって作業する際には
面倒くさがらずに安全帯を着用しましょう。

昇降機からの転落

工事現場ではあまり使わないかもしれませんが、
荷台に荷物の積み下ろしに使う昇降機(リフター)が付いているトラックもあります。

荷物の積み下ろしで昇降機に足をかけて踏み外したり、荷台と昇降機の段差で
バランスを崩して転落しそうになったり転落してしまうことが考えられます。

対策としては
 ・荷台で作業する前に昇降機の位置や大きさを確認しておくこと
 ・昇降機を荷台の高さまでしっかりと上げること
などです。

重い荷物を積み下ろしするのに昇降機があると便利ですが、
使い慣れてくると昇降機の扱いがいい加減になって事故に繋がるので注意しましょう。

クレーンの揺り返しによる転落

通称「ユニック車」と言われる荷台に小型クレーンが搭載されたトラックでは、
クレーンを使って荷物の積み下ろしを行います。

例えば資材の入ったフレコンバッグをクレーンを使って積み下ろしする際、1人が
クレーン操作、もう1人が荷台の上でフレコンバッグの付け外しを行うことがあります。

フレコンバッグを付けたクレーンを動かした時にフレコンバッグが揺れて、その揺れた
フレコンバッグが荷台上の作業員に当たって転落しそうになることがあるのです。

ユニック車のクレーン操作時には荷台上の作業員の立ち位置が決まっていますが、
それを理解していないと事故に繋がります。

ユニック車を使った作業では、クレーン操作する側だけでなく荷台上で作業する
作業員にも安全衛生教育をしっかりと行うことが対策となります。

脚立からの転落

工事現場では少し高い位置の作業をするのに脚立を使いますが、
脚立を使った作業でもヒヤリハット事例が発生しているのです。

例えば脚立の天板に乗ってバランスを崩した、段差のある場所に置いた脚立に乗って
バランスを崩した、開き止めをセットし忘れたなどが挙げられます。

一般的な脚立は天板に乗ることは想定していないので、
基本的には天板に乗って作業しないことを徹底しましょう。

天板に乗れる脚立の場合には、高さに応じて手すり付きのものを選ぶことも必要です。

脚立を使用する際は必ずできるだけ水平な場所を選んで脚立を設置することで、
脚立からの落下事故が防げます。

開き止めが付いている脚立では、たとえ短時間での利用であっても面倒くさがらずに
開き止めをセットすることを強く推奨しなければなりません。

足場からの転落

住宅など建物の建築現場や外壁塗装の現場では、
組み立てた足場の上で作業することになります。

高所作業時には安全帯の着用が義務付けられているため、
最近は足場作業を行う際には安全帯を着用しているケースがほとんどとなっています。

作業時に安全帯を着用することに加えて、足場自体にも転落を防止する措置を
講じることで重大事故に繋がるリスクが回避できるのです。

実際にあった足場作業中のヒヤリハット事例としては、
足場板のツメが外れて足場板が傾き転落しそうになったというものがあります。

足場の上を移動中に躓いて転びそうになったり、
作業の反動でバランスを崩して足場から転落しそうになったというケースも見られます。

また移動式足場を使う作業では、設置位置がズレたために身を乗り出して
作業していたら足を踏み外して転落しかけたというケースです。

対策としては、足場板は人が乗ってもツメが外れないようにしっかりと設置すること、
ツメが劣化している足場板は使わないことです。

足場を組む前に足場板のツメが劣化していないかチェックすることも忘れないように
してください。

足場の上で躓くのを防ぐには、足場を組む時に極力段差が生じないようにすること、
足場の上に足を引っかける恐れのある物を置いておかないことです。

バランスを崩しての転落を防ぐために、足場には手すりや中桟、幅木などを
取り付けておきましょう。

上下の足場で資材などを受け渡しする際は、
できれば滑車を使って直接手渡しは避けるのがベターです。

移動式足場を使う際は足場が動かないようにしっかりと固定、身を乗り出さなくても
作業できるようにその都度適切な場所に足場を動かすことも重要となります。

足場自体のKY活動をしっかりと行った上で足場での作業時には
安全帯を着用することで、足場からの落下事故は防げます。

高所から資材や作業道具を落とす

工事現場のヒヤリハット事例として「高所からの物の落下」もよく見られます。

高所で作業している人自身に被害は発生しないものの、下で作業している人や
工事とは無関係の通行人などに被害を及ぼす恐れがあるのです。

考えられるのは高所で作業している人が誤って作業道具や資材を落としてしまう、
足場板が外れて落下するなどといったことです。

作業道具や資材の落下に対する対処法として、
高所での作業を行っている時はその下で作業は行わないことが挙げられます。

道路など不特定多数の人が往来する場所に面している場合は、
落下防止ネットを設置することが求められます。

また手を滑らせて作業道具や資材を落とさないように、
高所での作業時は必ず滑り止めが付いた手袋を着用することも必要です。

手袋の着用はちょっとした怪我の防止にも繋がりますから、
高所作業時に関わらず工事現場での作業では手袋の着用を推奨しましょう。

透明ガラスへの激突

住宅やマンション、ビルなどの建設現場では、
透明なガラスに気付かずに激突してしまう事故も発生します。

単にぶつかるだけで済めば良いですが、
ぶつかった拍子にガラスが割れると大怪我に繋がってしまうのです。

特に作業の初期段階で通っていた場所に作業終盤になってガラスがはめ込まれると、
気付かずに激突してしまうことがあります。

可能であればガラスに透明でないシートをかけておく、
ステッカーなどを貼り付けてガラスの存在をアピールすることで激突が防げます。

クレーン車やショベルカーなど作業車のエリアに入ってしまう

工事現場ではクレーン車やショベルカーなどの作業車を使うことも多いですが、
作業車の作業エリアに作業員が入ると危険にさらされるのです。

例えばクレーンを動かしている時にアームの旋回範囲内に入ると、
頭など身体にアームが当たってしまいます。

ショベルカーが旋回した時に近くに作業員が居てショベル部分にぶつかると
命に関わる重大事故となります。

作業車の作業エリアを全ての作業員にしっかりと把握させて、
作業車が動いている時には作業エリアに入らないようにすることが重要です。

できれば作業車を使って作業を行う際には誘導員を置いて、
作業車の作業エリアに人が入らないようにチェックするとよりベターです。

トラックが勝手に坂を下り始める

日本ではあまり見かけませんが、駐車中で誰も乗っていない車が勝手に坂を
下り始める海外の事故映像を見かけることがあります。

工事現場によってはトラックを少し傾斜のある場所に駐車せざるをえないことも
出てきます。

特に重い資材などを積んだトラックは、
できれば傾斜の無い水平な場所に駐車させるのが基本です。

ただどうしても傾斜のある場所に停めざるをえない場合は、
しっかりとサイドブレーキをかけることを徹底しましょう。

また資材などを積んでいる場合は、
サイドブレーキに加えて輪留めをかけておくことも忘れてはいけません。

工事現場の車両はすぐに動かせるように、エンジンは切っているものの
サイドブレーキをかけていないケースが結構あります。

坂を勝手に下り始めた車は何かにぶつかって止まるまで見ていることしかできないので、
工事現場に停める車両は全てサイドブレーキをかけるようにしてください。

まとめ

工事現場で事故が発生すると、作業員はもちろん工事とは関係の無い周辺住民や
通行人をも巻き込んでしまう恐れがあります。

人の命に関わる重大事故を起こすと工事全体が止まってしまう上に、
施工会社や施工主にまで迷惑をかけることになるのです。

「これぐらいなら」という油断が大きな事故に繋がりますから、
工事現場ではKY活動をしっかりと行って事故防止に努めてください。

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