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相続手続きの司法書士費用は誰が払う?

遺産相続は何度も経験することではなく手続き方法がよく分からないこともあるので、
司法書士などの士業に手助けを求めることが多いです。

では司法書士などに遺産相続のサポートをしてもらった費用は
いったい誰が払うのでしょうか?

司法書士の相続手続き費用は不動産相続人が払う

司法書士に相続手続きをサポートしてもらった場合、
その費用は相続人の中で不動産を相続した人が払うのが一般的となっています。

相続手続き費用の負担についてルールがあるわけではないので、
基本的には誰が払っても問題はありません。

ただ土地・建物といった不動産を相続する場合には不動産登記が必要で、
不動産登記の代行は基本的に司法書士にしかできないのです。

相続する遺産に不動産が含まれている場合は必然的に司法書士に相続手続きを
サポートしてもらうことになります。

要するに司法書士にサポートを依頼するのは不動産登記が必要だからで、
不動産登記に直接関係する不動産相続人が費用を払うのが一般的なわけです。

負担割合は相続人による話し合い

遺産の不動産を複数の相続人で分ける場合の費用負担割合は相続人同士での
話し合いによって決まります。

先にも書いたように相続手続きの費用負担にルールは無いので、
より多く相続する人の負担割合が高いといけないことはないです。

相続割合と費用負担割合を同じにしても良いですし、
不動産相続人全員で等しく費用を分担しても問題ありません。

司法書士に払う金額については後述しますが、決して安くはありませんからしっかりと
話し合って負担割合を決めておかないと後々トラブルの元となってしまいます。

不動産を相続しない人が司法書士費用を負担するケースも

一般的には相続手続きで発生する司法書士費用は不動産の相続人が負担しますが、
中には不動産を相続しない人が司法書士費用を負担するケースもあります。

例えば相続すべき不動産の価値が低すぎて現金化しにくい、
反対に不動産の価値が高すぎて固定資産税の負担が大きいなどです。

相続する不動産の価値が極端に低いあるいは高い場合には、
不動産を相続するメリットが大きくありません。

メリットが大きくない不動産を相続してもらう代わりに、
不動産を相続しない人が司法書士費用を負担するというわけです。

ただ不動産を相続しない人だけが司法書士費用を負担することは少なく、
相続人全員で均等割りか不動産相続人だけが負担するケースが一般的です。

相続手続きを司法書士にサポートしてもらうのにかかる費用

実際の相続手続きを司法書士にサポートしてもらう場合には
 ・相続登記にかかる費用
 ・司法書士の報酬
という2つの費用がかかります。

相続登記にかかる費用としては具体的に
 ・不動産の調査費用
 ・戸籍謄本や住民票など必要書類の取得手数料
 ・登録免許税
などです。

「不動産の調査費用」は不動産を所有している自治体の課税台帳や資産明細などの
固定資産台帳を閲覧するのに必要な手数料で、1件につき400円程度です。

登記識別情報通知書いわゆる登記済権利書や固定資産税の課税通知書があると
相続すべき不動産が分かるので、別途調査費用は発生しません。

戸籍謄本などの必要書類の取得も相続する不動産1件ごとに必要で、
必要書類を全て揃えるのには1件につき5,000円程度かかると思っておきましょう。

必要書類の取得を司法書士に代行してもらう場合には、
遠方だと郵送代や交通費などの実費が上乗せされます。
(必要書類はできるだけ自分で取得した方が安く済む)

「登録免許税」は不動産登記そのものにかかる税金で、相続する不動産の
固定資産税評価額の0.4%を登録免許税として納めなければいけません。

例えば相続する実家の土地・建物の固定資産税評価額が1000万円だとすると、
登録免許税は1000万円の0.4%なので4万円となります。

司法書士の報酬

相続手続きをサポートしてもらうのに司法書士へ支払う報酬の相場は6~8万円です。

司法書士は自由報酬ですから基本的に報酬相場は無いのですが、
日本司法書士会連合会が2018年に報酬に関する調査を行っています。

日本司法書士会連合会の調査によると、一番安い北海道地区の平均が60,983円、
一番高い近畿地区の平均が78,326円といった結果が出ています。

司法書士への報酬に先の相続手続きそのものにかかる費用をプラスすると、相続する
不動産の規模にもよりますが少なくとも10万円以上はかかると思った方が良いでしょう。

司法書士がサポートできるのは不動産を含む遺産相続のみ

司法書士が遺産相続手続きのサポートができるのは相続遺産に不動産が
含まれる場合のみで、それ以外の相続手続きではサポートができません。

不動産登記は司法書士の独占業務ですから、
不動産登記が必要な遺産相続手続きは司法書士の業務となります。

ただし相続遺産に不動産が無く不動産登記が不要な場合には、
司法書士が相続手続きをサポートすることはできないのです。

では遺産に不動産が含まれない場合の相続手続きをサポートできるのは誰かと言うと
 ・弁護士
 ・行政書士
 ・税理士
の3士業です。

弁護士はあらゆる状況の相続手続きをサポートできますが、行政書士と税理士は
司法書士と同様に相続の状況次第ではサポートできないこともあります。

行政書士は遺産分割協議書の作成のみサポート可能

行政書士が相続手続きをサポートできるのは「遺産分割協議書の作成」のみです。

遺産分割協議書の作成のみであれば、相続遺産に不動産が含まれていても
相続税の申告が必要でも行政書士はサポートできます。

ただし不動産登記は司法書士、相続税の申告は税理士に別途サポートしてもらう
必要があります。

行政書士に遺産分割協議書の作成を依頼するのは、
基本的に相続遺産に不動産無しで相続税申告も不要なケースのみです。

また不動産無し相続税申告不要でも、相続人全員の合意が得られていない場合は
行政書士は相続手続きのサポートができません。

遺産分割協議書には相続人全員の実印を押印しなければならないので、
相続人全員の合意が得られていないと遺産分割協議書が作れないのです。

行政書士は相続に関するアドバイスもできませんし、合意が得られていない相続人の
間に入って紛争解決を仲介するといったこともできません。

紛争解決は弁護士にしかできない業務ですから、相続人の間で合意が
得られていない場合は行政書士ではなく弁護士にサポートを依頼しましょう。

行政書士に相続手続きをサポートしてもらう場合の費用

行政書士に遺産分割協議書の作成をサポートしてもらう場合にかかる費用は
大体5~7万円といったところです。

司法書士と同様に行政書士も自由報酬なので、
遺産分割協議書の作成を依頼した場合の決まった報酬相場はありません。

日本司法書士会連合会が2020年に実施した報酬に関する調査によると、
遺産分割協議書の作成の報酬は平均で68,325円となっています。

同じ調査で5万円に設定している行政書士が多いことも分かっているので、
相続手続きで行政書士の報酬相場は5~7万円ぐらいとなるわけです。

ただし相続人や相続財産の調査が必要な場合には、
遺産分割協議書の作成とは別に報酬が発生するの注意してください。

税理士は相続税申告が必要な相続手続きのみサポート可能

税理士は相続税申告が必要な遺産相続についてのみ遺産分割協議書の作成などの
サポートが可能です。

税理士に認められているのは税務署に提出する書類の作成代行ですから、
相続税申告が必要な相続手続きのサポートができるのです。

相続財産の総額が相続税の基礎控除額内に収まっていて相続税申告が不要な場合は、
税理士は遺産分割協議書の作成など相続手続きのサポートはできません。

ちなみに相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。

相続人が1人なら3600万円、2人なら4200万円、3人なら4800万円までは
相続税申告不要で、それを超える分については相続税申告が必要となります。

相続財産に不動産が含まれる場合、移転登記など不動産に関する手続きは
司法書士の独占業務であり税理士には行えません。

税理士に相続手続きをサポートしてもらう場合の費用

税理士も基本的には自由報酬ですが、相続手続きの報酬については遺産総額の
0.5~1%に設定している税理士が多くなっています。

相続人が1人だと相続税の基礎控除額は3600万円なので、税理士に相続手続きの
サポートを依頼するのは遺産総額が3600万円を超える場合です。

例えば遺産総額が4000万円だとすると、
4000万円の0.5~1%なので税理士に支払う報酬は20~40万円となります。

ただし相続人が複数の場合には「基本報酬の10%×(相続人の数-1)」を加算報酬として
請求されるケースが多いです。

例えば相続人が3人で遺産総額が5000万円だと、
基礎報酬は遺産総額の0.5~1%なので25~50万円となります。

相続人が3人だと2人分の加算報酬となるので、25~50万円の10%×2人分で
5~10万円が加算されて税理士へ支払う報酬は総額で30~60万円となるのです。

司法書士や行政書士の相続手続きの報酬がせいぜい10万円程度であることに
比べると税理士の報酬はかなり高額となっています。

弁護士は全ての状況の相続手続きをサポートできる

弁護士はあらゆる法律に精通していることから最上位の士業であり、
相続手続きのサポートについてはほぼ制限がありません。

相続財産に不動産が含まれていても相続税申告が必要であっても
遺産分割協議書の作成が可能です。

相続人全員の合意が得られていない場合でも、
相続人の間に入って紛争解決を仲介することもできます。

弁護士は不動産の移転登記や相続税申告の代行も可能ですから、
相続で困った時は弁護士に相談すれば良いのです。

ただ相続手続きを専門的に取り扱っている弁護士はあまり居ません。

弁護士に相続手続きサポートを依頼しても不動産の移転登記は司法書士、
相続税申告は税理士に外注することが多くなっています。

外注されると司法書士や税理士の報酬が上乗せされて弁護士に支払う報酬が
より高額になってしまう恐れがあります。

相続人の間で合意が得られていないなら弁護士に頼るしかありませんが、
合意が取れているなら司法書士や行政書士、税理士にサポートしてもらいましょう。

弁護士に相続手続きをサポートしてもらう場合の費用

2004年3月に報酬規程が廃止されて現在は弁護士も自由報酬ですが、
廃止された報酬規程を基準に報酬額を設定している弁護士が多いです。

相続手続きを弁護士にサポートしてもらうのにかかる費用は
 ・着手金
 ・報酬金
の2つが基本で、中には報酬金のみで着手金を請求しない弁護士も居ます。

旧報酬規程では経済的利益が
 ・300万円以下 着手金8% 報酬金16%
 ・300万円超~3000万円以下 着手金5%+9万円 報酬金10%+18万円
 ・3000万円超~3億円以下 着手金3%+69万円 報酬金6%+138万円
 ・3億円超 着手金2%+369万円 報酬金4%+738万円
となっています。

例えば相続財産が300万円だとすると着手金は8%なので24万円、300万円全てを
相続すると報酬金が16%の48万円で合計72万円が弁護士へ支払う報酬です。

相続遺産が相続税申告が必要な4000万円で全額相続したとすると
 ・着手金 189万円
 ・報酬金 378万円
で合計567万円を弁護士に支払うことになります。

司法書士や行政書士はもちろん税理士と比べても桁違いの高額で、相続人の間で
どうしても合意が得られないケースを除いては弁護士に頼るのは得策ではありません。

遺産相続では不動産鑑定士や公認会計士の力が必要な場面も

相続手続きに直接は関わりませんが、不動産鑑定士や公認会計士の力が
遺産相続では必要となる場面が出てくることもあります。

例えば相続遺産の中に非上場株式がある場合、
この非上場株式の財産的価値を算定するのに公認会計士の力が必要です。

上場している株式なら株価を元に価値が算定できますが、
非上場株式だと株価が分からないので価値の算定ができません。

株式の額面よりも価値が上がっている可能性もあれば下がっている可能性もあるので、
公認会計士に価値を算定してもらうわけです。

また相続する不動産の固定資産税評価額と時価に大きな差がある場合には、
不動産鑑定士に公平な不動産鑑定評価書を作ってもらうことになります。

固定資産税評価額は低めに設定されているため、例えば固定資産税評価額が
3000万円の不動産でも売りに出すと5000万円で売れる可能性があるのです。

2人の相続人が固定資産税評価額3000万円の不動産と1000万円の預貯金を
均等に相続するとします。

3000万円の不動産を相続した方が1000万円の預貯金を相続した方に1000万円を
支払って2人の相続人がそれぞれ2000万円ずつ相続することになります。

ところが固定資産税評価額3000万円の不動産を売りに出して5000万円の値が付くと、
実質的に不動産を相続した方が得することになってしまうのです。

そこで相続後に不動産を売りに出しても2人の相続額が均等になるように、
事前に不動産鑑定士に相続する不動産の価値を鑑定してもらうわけです。

いずれも特殊なケースではありますが、遺産相続では不動産鑑定士や
公認会計士の力が必要になる場面があることも頭に入れておきましょう。

まとめ

相続手続きを司法書士にサポートしてもらう場合、
その費用は不動産を相続する人が払うのが一般的です。

司法書士にサポートしてもらうということは相続遺産に不動産が含まれているので、
司法書士費用は不動産相続人が支払うのが通例となっているわけです。

ただ司法書士費用を不動産相続人が支払うというのは一般論であり、
法律などで決まっているわけではありません。

相続人全員で司法書士費用を誰が払うのかを話し合って、
全員の納得が得られる落としどころを見つけるのがベターです。

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