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休業損害証明書は仕事を休んでないと発行されない?

交通事故に遭って仕事を休まざるをえなくなった場合には、勤務している会社に
「休業損害証明書」を発行してもらい加害者に休業損害を請求します。

では交通事故に遭ったものの仕事を休んでないと休業損害証明書は
発行してもらえないのかなど交通事故の休業損害について詳しく見ていきましょう。

仕事を休んでないなら休業損害証明書は発行してもらえない

交通事故に遭ったものの特に大きな怪我が無く仕事を休んでない場合には、
当然ですが休業損害証明書は発行してもらえません。

そもそも休業損害は交通事故による怪我などで働けなくなったことで
減った収入を補償するものです。

大きな怪我が無くて休むことなく仕事ができているなら収入が減ることはないので、
休業損害を請求することはできません。

休業損害証明書は休業損害を請求するのに実際に仕事を休んでいることを
証明するものです。

仕事を休んでなくて休業損害を請求できないケースでは、
会社としても休業損害証明書を発行することはできないというわけです。

休んでないのに休業損害を請求すると詐欺に問われる恐れも

「会社に協力してもらって休業損害証明書を発行してもらえば、仕事を休んでなくても
休業損害が請求できるのでは?」とよこしまなことを考える人も居るかもしれません。

確かに会社が休業損害証明書を発行してくれるなら、
休んでなくても休業損害を請求することは可能です。

ただ休んでないことが請求先の保険会社にバレると「詐欺」に問われることも
考えられるのです。

筆者は実際に保険会社の人に、会社とグルになって仕事を休んでないのに
休業損害を請求してきたケースについて聞いたことがあります。

交通事故による怪我で下半身に痺れが出たので週の半分は仕事を休んで
通院治療しているとして休業損害の請求があったそうです。

会社からの休業損害証明書も出ているため、
請求された保険会社は被害者に対して休業損害を1か月精算で支払っていました。

ところが数か月経っても治療が終わらないことを不審に思った保険会社は、
被害者が務める会社の周辺で聞き込みをします。

周辺で聞いたところ被害者は毎日出勤しているらしいということが発覚したので、
より詳しく調査することになりました。

調査の結果、実際に整骨院での治療は続けているものの月に1~2日程度で、
大幅に水増しして休業損害を請求・受領していることが分かったのです。

会社だけでなく治療に通っていた整骨院もグルだったらしく、
 ・休業損害を不正請求した被害者
 ・被害者が休んでないのに休業損害証明書を発行した会社
 ・治療記録を改ざんした整骨院
の3者を保険会社は詐欺で告発して余分に支払った休業損害を返還してもらいました。

保険会社は被害者に不審な点があると探偵を使って調査することもあるらしく、
大抵の不正請求は看破できるとのことです。

経営者と社員の関係が近しい小さな会社では休んでないのに休業損害証明書を
発行してもらえることもありますが、ほぼバレるので絶対にしないでください。

休業損害証明書は自分で作成することもできるが・・・

サラリーマンなどの給与所得者でも休業損害証明書を自分で作成することは可能です。

加害者側の保険会社から被害者本人に休業損害証明書の用紙が送られてくるので、
その用紙を会社の担当者に渡して作成してもらうのが一般的です。

ただ会社の規模によっては休業損害証明書を作成する担当者が居らず、
自分で作成するように言われることもあります。

自分で作成することはできるものの、給与所得者なのに会社ではなく
被害者本人が休業損害証明書を作成したとなると保険会社に多少怪しまれます。

もし休業損害の請求で加害者側保険会社と揉めた場合に、
本人作成の休業損害証明書だと証拠能力が低くなってしまうのです。

実際に保険会社と揉めて裁判までもつれ込んでも、会社作成の休業損害証明書が
あれば請求通りの休業損害が認められる可能性が高いです。

しかし本人作成の休業損害証明書だと保険会社の言い分が通ってしまう可能性が高く、
休業損害が低く抑えられてしまう恐れがあります。

どうしても自分で作成せざるをえないなら仕方ありませんが、
休業損害証明書はできるだけ会社に作成してもらいましょう。

自営業者や個人事業主も休業損害は請求できる

自営業者や個人事業主が交通事故に遭って仕事を休まざるをえない場合にも、
当然休業損害は請求できます。

自営業者や個人事業主は前年の収入が分かる確定申告書を加害者側の保険会社に
提出するだけで休業損害が請求できるケースもあります。

保険会社によっては形だけの休業損害証明書の提出が求められますが、
基本的には確定申告書を元に休業損害額を計算するのです。

自営業者の場合は、前年の確定申告書の所得から事故に遭った年の所得を
差し引いた額を休業損害とすることが多くなっています。

当年の所得が確定しないと休業損害額が確定できないので、実際に休業損害を
受け取れるまでにかなりの時間を要することもあるので注意が必要です。

個人事業主の場合は前年の確定申告書の所得を365日で割って
1日当たりの所得を出し、休業した日数分を休業損害額とすることが多いです。

自営業者と個人事業主は固定費の請求も忘れずに

自営業者や個人事業主が休業損害を請求する場合には「固定費」を含めることを
忘れないようにしましょう。

例えば自営業者は仕事を休んだとしても店舗や事業所の家賃や光熱費は
払わないといけません。

店舗や事業所の家賃や光熱費など休んでも発生する固定費も休業損害として
請求することが可能です。

ただ加害者側の保険会社は休業損害の支払いを少なく抑えようとするので、
被害者が積極的に請求しないと固定費は無視される可能性が高いです。

休業損害を貰ったものの固定費を差し引いたらほとんど手元に残らなかった
ということが無いように、忘れずに固定費も請求するようにしてください。

給与収入の無い主婦や主夫も休業損害は貰える

基本的には収入が無いと休業損害は請求できませんが、
主婦や主夫については給与収入が無くても休業損害を請求できます。

以前は主婦や主夫の休業損害は認められないこともあったようですが、
現在は家事代行サービスの登場で「家事=労働」として休業損害が認められるのです。

主婦や主夫も自営業者などと同様に、
形だけの休業損害証明書の提出を保険会社に求められることがあります。

多くの保険会社は自賠責基準の日額5,700円で主婦や主夫の休業損害を
計算しており、その金額に不満が無ければ特に手続きは必要ありません。

ただ主婦や主夫は24時間勤務も同然であり、
実際に家事をしている時間だけを計算しても1日7~8時間にはなります。

7~8時間働いた日当が5,700円では安すぎるため、
主婦や主夫の休業損害は「賃金センサス」の平均賃金を元に計算するのが妥当です。

ただ個人で賃金センサスを調べて1日当たりの賃金を計算するのも面倒なので、
主婦や主夫の休業損害を請求する場合は弁護士に依頼するのがおすすめです。

有給休暇を使うと休業損害は請求できない?

怪我の通院治療に有給休暇を使うと業務上は「休んでないこと」になるので
休業損害は請求できないと勘違いするケースが少なくありません。

有給休暇を使って怪我の通院治療を行った場合でも休業損害は請求可能です。

実際に仕事は休んでいるものの有給休暇を使っているので給料は減らない、
だから休業損害は請求できないとはならないのです。

有給休暇の行使は労働者の権利であり、
交通事故の怪我治療のために使うものではありません。

交通事故の怪我の通院治療で有給休暇を使ったために、
その後使いたい時に有給休暇が使えないといったことも考えられます。

交通事故に遭わなければ怪我の通院治療で有給休暇を使わずに済んだわけですから、
有給休暇を使っても休業損害は請求できるのです。

実際に有給休暇は交通事故の損害の対象という裁判の判例もあり、現在は
多くの保険会社で有給休暇を使っても休業損害が支払われるようになっています。

有給休暇を使うと業務上は休んでないことになりますが、
保険の手続き上は休んだことになるので休業損害をしっかりと請求してください。

ボーナス減額や昇給なしも休業損害の対象

交通事故が原因で減額されたボーナス分や予定されていたけどなくなった昇給分も
休業損害として請求できます。

ボーナスは基本給を元に2か月分とか2.5か月分などと計算しますが、
怪我の通院治療で働く日数が減るとボーナスが減額されることもあります。

また通院治療によって一定期間仕事の効率が落ちることで、予定されていた
昇給や昇進が先送りになったり見送られたりすることも十分に考えられるのです。

交通事故に遭わなければボーナスが減額されることも、
昇給や昇進が無くなることもなかったので休業損害の対象となるわけです。

ただし交通事故が原因で減額されたボーナス分を休業損害として請求するには、
休業損害証明書とは別に「賞与減額証明書」の提出が必要となります。

また昇給や昇進が交通事故によって先送りになったり見送られたりした場合は、
上司や人事部に昇給や昇進が無くなった報告書を作成してもらわないといけません。

交通事故が原因で仕事を辞めざるをえなくなった場合も休業損害が貰える

交通事故で負った怪我の通院治療が長引いたり、
怪我の具合によっては退職せざるをえない状況に追い込まれることも考えられます。

交通事故が原因で退職に追い込まれた場合には、
退職してから怪我の症状が固定するまで休業損害が貰えるのです。

退職するまでは給料の減額分、
退職してからは基礎収入の日当分が休業損害となります。

基礎収入は退職時の手取り分から必要経費を差し引いて1日当たりの収入を出して、
症状固定までの日数をかけたものです。

例えば基礎収入の日当が8,000円で、退職から30日後に症状が固定したとすると
8,000円×30日で24万円が休業損害として貰えます。

ただし交通事故と退職の因果関係を証明する必要があり、
因果関係が証明できないと退職後の休業損害は認められません。

退職した会社に証明書を作成してもらうのが一番確実なのですが、退職した会社に
交通事故と退職の因果関係の証明書作成をお願いすることは難しいです。

会社としても既に退職した者に何かしらの証明書を発行するのは難しいので、
元同僚などの協力が必須です。

医師に「休業の必要は無い」と判断されても休業損害は貰える?

「診断書」や「医師の判断」は休業損害を請求する際の客観的な証拠となります。

ただ医師が「仕事を休まなくても良い」と判断した場合でも
休業損害を請求することは可能です。

むち打ちなどの神経症状ではレントゲンやMRIでは異常が見つからないことも
少なくありません。

レントゲンやMRIで異常が無いと医師は「仕事を休まなくて良い」と判断しますが、
被害者本人は酷い痛みや痺れで仕事どころではないこともあるのです。

診断書や医師の判断といった客観的な証拠が無いと厳しいですが、
実際に痛みや痺れが残っているなら休業損害を貰える可能性は十分にあります。

客観的な証拠が無くて保険会社に休業損害の請求を断られる場合には、
交通事故に強い弁護士に相談しましょう。

休業損害が請求できないケース

給与収入が無くても主婦や主夫は休業損害が請求できますが、
基本的に給与収入の無いと休業損害は請求できません。

具体的に言うと
 ・アルバイトをしていない学生
 ・失業中の人
などは給与収入の無く、通院治療で休んでも収入が減らないので休業損害は
請求できないというわけです。

また
 ・生活保護受給者
 ・年金受給者
 ・その他不労所得者
についても休業損害は請求できません。

生活保護や年金、家賃収入などの不労所得は交通事故が原因で
金額が少なくなることは基本的にありません。

ただし年金を貰いながら働いている場合や不労所得でも交通事故が原因で
金額が減ったことが証明できる場合は休業損害を請求できることがあります。

会社の役員で役員報酬を受け取っている場合には、
基本的に休業損害は請求できません。

役員報酬は株主総会などで支給額が決められている「役職に対する報酬」であり、
「労働の対価」ではありません。

労働の対価ではないので交通事故の怪我の通院治療で休んでも減額されることは無く、
休業損害の対象はならないのです。

ただし中小企業などで役員報酬が労働の対価と認められる場合には
休業損害を請求できます。

具体的な就業予定があれば給与収入の無くても休業損害を請求できる

アルバイトをしてない学生や失業中の人でも、
具体的な就業予定があれば休業損害を請求できます。

例えば学生や失業中でも内定を貰っていて、就業に必要な研修や勉強会などに
交通事故が原因で出られない場合などは休業損害の対象となります。

内定を貰うところまで行っていなくても、就活中で交通事故に遭わなければ
内定が貰えていた可能性があるといった場合でも休業損害が貰えます。

ただ就業予定で休業損害が貰えるかどうかはケースバイケースですから、
休業損害を請求しても貰えないこともあるので注意してください。

まとめ

交通事故の怪我が原因で仕事を休まざるをえない場合は、
会社に休業損害証明書を作成してもらうことで保険会社に休業損害が請求できます。

ただし怪我はしているものの仕事を休んでないと休業損害証明書は
作成してもらえませんし、休業損害を請求することもできません。

休業損害証明書は被害者自身で作成することもできますが、実際に休んでないのに
作成して休業損害を請求すると詐欺となる恐れがあるので注意してください。

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